「いろり燻製ミチシバつるし」
福井県の今庄でしか生育を許されていない渋柿の品種である「長良」を育てるところから「今庄つるし柿」づく
りは始まります。
正月を終え、1~4月初旬までは、柿の木の剪定作業です。枝振りを適度にすることにより、糖度の高い柿が安
定して生育します。
5,6月は鶏糞などの自然肥料を柿の木に施し、11月の収穫までは草取り作業で栄養が柿の木に行きわたるよ
うにします。
毎年11月の初~中旬が「長良」の収穫のシーズンです。
収穫された柿は、角切りと呼ばれるヘタに付いた枝を適度な長さに切る作業を経て、専用の道具でひとつひとつ
皮むきします。皮はヘタの周りをむいた後、縦にむきます。
むき終わった柿は、大きさ別にS~5Lの7段階に分類します。Mサイズ以上が出荷対象になりますが、4L以
上の柿は、できない年もある大変貴重なものです。
分類し終わったあとは、大きさごとにつるし柿用に特別に栽培された長さ約90cmの道芝(ミチシバ)で編んだ
縄に、柿の間隔が10cmになるように10個ずつつ吊るします。大きさを揃えてつるすのは、大きさによって乾燥
にかかる時間が異なるためです。
つるした柿は竿にかけて囲炉裏(いろり)の上に下げます。囲炉裏は、作業効率や衛生面を考慮し専用の部屋に
しつらえたものです。
この状態で1~2日間、状態を見ながら適切に燻し乾燥させます。柿の乾燥の具合を見ながら温度を適切に管理
するため、夜も約3時間ごとに火の様子を見回ります。
いろりにくべる薪は、火力が強く煤が少なく燻製の仕上がりに適する欅のみを利用します。
いろりの上には3段に柿がつるせるようになっており、第1弾の乾燥が終わった後の柿は、中段で乾燥させるこ
とになります。下段から中断に上げる際には、乾燥の具合を見て、いろりから遠い両端の柿は中央に、中央の柿
は両端に移動させ、全体が均一に乾燥するようにします。
中段につるした柿には、種割りというもみほぐしの工程を行います。これによって柿の種が実から分離して食べ
やすくなり、旨味も増します。
中段で4,5日燻し乾燥させた柿は、下段のときと同様に中央と両端を入れ替えたあと、上段に移動させ、仕上
げの乾燥に入ります。上段で4,5日燻し乾燥させた後、仕上がりを見て引き上げ、ミチシバにつるしたままの
状態の柿の実を4回湯洗いし、煤や不純物を洗い落とします。
湯洗い後は冬の自然風に通し自然乾燥で水気を落としたあと、清潔な手で実をもみほぐし、適度な柔らかさにし
ます。
屋内で3日ほど置いたあと屋外で3,4日天日干しして乾燥させきります。
出荷用に1センチほどに角切りし、形を整え、今庄つるし柿は完成です。
つるし柿の品質は乾燥の技術で決まります。乾燥が十分でない干し柿はすぐにカビが生えてきてしまいます。逆
に乾燥しすぎた柿は堅くて食べにくくなります。窪田の柿は、何百年も前から栄養価の高い保存食として尊ばれ
てきた今庄つるし柿ならではのいろり燻製ミチシバつるしの伝統を守ってきました。それは、今庄つるし柿の優
れた保存性としっとりした上質の味わいの両立を守ってきたことに他なりません。